湯町窯エッグベーカーで目玉焼きがレベルアップ
エッグベーカーと呼ばれる調理器具がある。
直火にかけられる蓋付の小ぶりな器で、格別においしい目玉焼きを作ることができる。
フライパンでつくった目玉焼きより厚みがあり、ゆで卵にも近い。
しかし、食べなれた目玉焼きやゆで卵よりずっと特別で、食卓では主役になってくれる。
日常の中で、この特別感を演出してくれることは、いい器の条件だ。
ゆっくり起きた休日の朝はこのエッグベーカーで作った目玉焼きで一日が始まる。
我が家のエッグベーカーは島根県布志名焼湯町窯の小サイズ。丸みを帯びた形で、特徴的な黄釉と茶色のツートーンは器そのものを「おいしそう」に見せる。
このほかにも三重県の伊賀焼でも作られているのを見かける。伊賀焼は今でも土鍋がよく焼かれ、湯町窯では昔火鉢がよく焼かれていたように、耐火性の強い土だからこそできる器なのだろう。
伊賀焼の土鍋についてはまた書きたい。いいものだから。
必須の材料は卵だけ。
ここに好きなものをいくらでも入れればいい。
ほうれん草、ベーコン、きのこ、バター、オリーブオイル。卵に合うものなら何でも試せばいい。具を入れるときは卵の下に入れる。具に火を通しやすいし、食べるときに具は何だろうと宝さがしみたいになる。
今回は一番ベーシックに卵に塩と胡椒だけで作る。
エッグベーカーに卵を割り入れる。
油はひかなくてもいい。もちろん味つけとして入れてもいい。
卵を割り入れるときは、本体側面に白身が垂れないように注意する。
垂れた状態で火にかけると取れない汚れになる
でも使っていればいずれ汚れていくので気にしすぎない。
うちのエッグベーカーはすでに黒い。
コンロに網を置き、その上に蓋をしたエッグベーカーを乗せ極弱火で5分くらい。
具をたくさん入れたらもっと長く、
やわらかいとろとろの状態が好きであればもっと短く。
火が強すぎると白身が泡立ち食感が悪くなる。弱火がコツだ。
火の加減、卵の大きさ、卵の温度、具の量、いろいろな要因で出来具合は変わるから、火にかける時間を一定にしても出来上がりは安定しない。5分というのはあくまで目安。
だから、たまに蓋を開けて火の通り具合を確認する。
ただし蓋は熱くなっているので、軍手とかをしたほうがいい。
周りの白身が固まり、黄身にはまだ火が通らない程度。
ここで火を止める。
ただし火を止める直前10秒くらいは蓋を開けない。
なぜならこのあと余熱で黄身に火を通していくから、蓋を開けてしまうと熱が逃げてしまう。
余熱は5分くらい。
うまくできているか気になり、そわそわしながら待つ。
ソーサーに載せ、スプーンを添えて食卓に運ぶ。
このソーサーがセットであることもまたいい。
洗い物が増えるなどと言うのは野暮である。これに載せることにより、先ほどまでコンロの上の調理器具だったものが、食卓で料理を食べるための食器へと変わるのだ。
十分余熱できたら、(もしくは待ちきれず)蓋を開ける。卵の香りが漂う。
初めて食べる人はここで感嘆の声をあげる。
ただの目玉焼きに「うわー」などという人がいるか。エッグベーカーではそれが起こる。目玉焼きの朝ごはんがちょっとしたイベントになる。作ったこっちとしてはニヤリとする。
あとは、好みで塩や胡椒をかける、マヨネーズや醤油でもいい。なんでもいい。
硬く作れば食べ応えがある立派なおかずとなり、
やわらかく作れば、パンにつけるソースのように食べてもおいしい。
ちなみに自分の好みは、しっかり固まりながらも、黄身が琥珀のような透明感を保っている頃合い。
狙い通りの火の通り加減を作り出すには練習がいるが、どんな出来上がりでもおいしいのだからかまわない。
具の組み合わせ、火の通し加減でいくらでもバリエーションが増えるから、飽きることがない。
具入りのパターンについてもまたいずれ。