303 CAFE

すみずみからさきざきまで

湯町窯モーニングカップでホットレモネード

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家でホットレモネード

湯町窯のたっぷりサイズのマグカップを手に入れた。湯町窯は先日紹介したエッグベーカーが有名な島根の窯元である。

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今回手に入れたものは黄釉モーニングカップ。表面には指掻きでざっくりとした模様がつけられている。丸っとした本体に大きな特徴的な把手が取り付けられ、口元は飲みやすいように少し広がる。全体におおらかな印象をもつが、茶色の高台が全体の印象を引き締める。

エッグベーカーを見ていても思うが、湯町窯の茶色と黄色の2色使いは実に「おいしそう」だ。

これで何を飲もうか。たっぷりコーヒーは言うまでもなく似合う。高台のついた本体は大きな湯のみのようでもあり、お茶もいいだろう。でもやっぱり丸く黄色いこのマグカップを見ていると飲みたくなるのはホットレモネードだ。

 

ホットレモネードの材料

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ホットレモネードの材料

マグカップにたっぷりのレモネード(全量300ml)を作る材料は以下の通り

・レモン1個

・はちみつ おおさじ1 チューブ小分けのものが大さじ1の量で都合がいい

・砂糖 大さじ1

・お湯 

正直この分量だと少し酸っぱい。酸っぱいのが好きなのだ。もし酸っぱすぎたら砂糖の量を多くする。はちみつを増やすと風味が増えるが少々くどく感じる。

レモンではなくレモン汁のほうが安く簡単に作れるが、皮ごと絞ったほうが少し苦みが入っておいしいのだ。

 

ホットレモネードの作り方

蜂蜜のシロップ漬けを作ってからお湯に溶かすレシピも世の中にあるが、(というよりそのほうが正統派か?)思い立った時にすぐ飲みたいのだから絞ってそのまま混ぜるスタイル。

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半分に切って輪切りを一枚残す

まずはレモンをよく洗い、半分に切る。見えるところの種は取っておく。

そして最後に浮かべるための輪切りを一枚残す。なくてもいいけどあったほうがそれっぽい。

それにこういうのがあると飲むときに酸っぱさの調整ができる。

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絞る。それはもう、絞る。

あとはレモン絞りで絞る。握力の限り絞る。絞れば絞るほど酸っぱいし、皮の苦みやえぐみが入るし、それがうまい。苦手な場合は控えめに絞る。

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砂糖を入れて、

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蜂蜜を入れる。

そこに砂糖と蜂蜜を入れる。混ぜる。溶けるまで混ぜる。底に付いた蜂蜜もしっかり混ぜる。

そしてギリギリまでお湯を入れる。混ぜる。溶け切らなかった砂糖や蜂蜜を溶かしきる。

最後にレモンの輪切りを浮かべれば完成!

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完成!

味は、甘酸っぱいあの味だ。当然おいしい。

レモンの旬は秋から春らしい。これからの時期が楽しみだ。

湯町窯エッグベーカーで目玉焼きがレベルアップ

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湯町窯のエッグベーカー

 

エッグベーカーと呼ばれる調理器具がある。

直火にかけられる蓋付の小ぶりな器で、格別においしい目玉焼きを作ることができる。

フライパンでつくった目玉焼きより厚みがあり、ゆで卵にも近い。

しかし、食べなれた目玉焼きやゆで卵よりずっと特別で、食卓では主役になってくれる。

日常の中で、この特別感を演出してくれることは、いい器の条件だ。

ゆっくり起きた休日の朝はこのエッグベーカーで作った目玉焼きで一日が始まる。

 

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この形、色がもうすでにおいしそう


我が家のエッグベーカーは島根県布志名焼湯町窯の小サイズ。丸みを帯びた形で、特徴的な黄釉と茶色のツートーンは器そのものを「おいしそう」に見せる。

このほかにも三重県伊賀焼でも作られているのを見かける。伊賀焼は今でも土鍋がよく焼かれ、湯町窯では昔火鉢がよく焼かれていたように、耐火性の強い土だからこそできる器なのだろう。

伊賀焼の土鍋についてはまた書きたい。いいものだから。

 

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卵と塩と胡椒だけでおいしい

  

必須の材料は卵だけ。

ここに好きなものをいくらでも入れればいい。

ほうれん草、ベーコン、きのこ、バター、オリーブオイル。卵に合うものなら何でも試せばいい。具を入れるときは卵の下に入れる。具に火を通しやすいし、食べるときに具は何だろうと宝さがしみたいになる。

今回は一番ベーシックに卵に塩と胡椒だけで作る。

 

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卵が外にこぼれないよう丁寧に

エッグベーカーに卵を割り入れる。

油はひかなくてもいい。もちろん味つけとして入れてもいい。

卵を割り入れるときは、本体側面に白身が垂れないように注意する。

垂れた状態で火にかけると取れない汚れになる

でも使っていればいずれ汚れていくので気にしすぎない。

うちのエッグベーカーはすでに黒い。

 

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小さいのでコンロのごとくで支えられない。網が必要

コンロに網を置き、その上に蓋をしたエッグベーカーを乗せ極弱火で5分くらい。

具をたくさん入れたらもっと長く、

やわらかいとろとろの状態が好きであればもっと短く。

火が強すぎると白身が泡立ち食感が悪くなる。弱火がコツだ。

火の加減、卵の大きさ、卵の温度、具の量、いろいろな要因で出来具合は変わるから、火にかける時間を一定にしても出来上がりは安定しない。5分というのはあくまで目安。

だから、たまに蓋を開けて火の通り具合を確認する。

ただし蓋は熱くなっているので、軍手とかをしたほうがいい。

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このくらい。黄身に火を通さない程度で火を止める

 

周りの白身が固まり、黄身にはまだ火が通らない程度。

ここで火を止める。

ただし火を止める直前10秒くらいは蓋を開けない。

なぜならこのあと余熱で黄身に火を通していくから、蓋を開けてしまうと熱が逃げてしまう。

 

余熱は5分くらい。

うまくできているか気になり、そわそわしながら待つ。

ソーサーに載せ、スプーンを添えて食卓に運ぶ。

このソーサーがセットであることもまたいい。

洗い物が増えるなどと言うのは野暮である。これに載せることにより、先ほどまでコンロの上の調理器具だったものが、食卓で料理を食べるための食器へと変わるのだ。

 

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余熱でしっかり火が通る

十分余熱できたら、(もしくは待ちきれず)蓋を開ける。卵の香りが漂う。

初めて食べる人はここで感嘆の声をあげる。

ただの目玉焼きに「うわー」などという人がいるか。エッグベーカーではそれが起こる。目玉焼きの朝ごはんがちょっとしたイベントになる。作ったこっちとしてはニヤリとする。

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塩と胡椒を振る

 

あとは、好みで塩や胡椒をかける、マヨネーズや醤油でもいい。なんでもいい。

 

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黄身が固まっているけど、色は透明感を残す程度。これが好き

硬く作れば食べ応えがある立派なおかずとなり、

やわらかく作れば、パンにつけるソースのように食べてもおいしい。

ちなみに自分の好みは、しっかり固まりながらも、黄身が琥珀のような透明感を保っている頃合い。

狙い通りの火の通り加減を作り出すには練習がいるが、どんな出来上がりでもおいしいのだからかまわない。

具の組み合わせ、火の通し加減でいくらでもバリエーションが増えるから、飽きることがない。

具入りのパターンについてもまたいずれ。

【実生結果2か月】アデニウム実生のベストな方法考えました。

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めちゃくしゃかわいいアデニウム

6月の中頃にアデニウムアラビカムの種を植えた。

育て方をいろいろ調べても、植物などあまり育てたことのない自分にはいまいち正解が分からないので、土の種類と植え方を変えて発芽率が変わるか試してみた。

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種の植え方4パターン

そのとき試したのは4パターン。

多肉植物用の土 横植え

多肉植物用の土 縦植え

・種植え用の土 横植え

・種植え用の土 縦植え

あれから2か月以上経ち、ひと夏を経たアデニウムはすくすく育っている。

そして、発芽率、育ち方にだいぶ差が出た。

今回育て方を比較してみて結論は、

多肉植物用の土で縦向きに植えるのがいい。」

ただ反省すべき点もあり、今回の実験の結果から一番いい発芽のさせ方も改めて考えた。

 

結果

今回種を20個入手していたので、4パターンそれぞれ5個ずつ種植えトレーに植えた。

根が張るまで最初の1か月くらいは室内に置き、その後は雨の当たらない外。

土が乾いたら水をあげていた。といっても真夏はすぐ乾くのでほぼ毎日だ。

それで2か月たった後の様子が冒頭に載せた写真だ。

せっかくなので、ノギス片手に発芽したアデニウムを測定した。

茎の太さ、葉の枚数、葉含めた全体の幅、高さを測った。

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こんな感じ

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その結果がこう


 土の種類は

土の種類は多肉植物用がいい。

発芽率をみるとパターン3以外はすべて100%発芽した。

パターン3だけ発芽率が低かった理由はよくわからない。

植え方の方向のせいなのか、土のせいなのか、たまたまそうゆう種だったか。

でも、発芽率以外の数字を比べると明らかに多肉植物用の土のほうがいいようだ。

肥料入りであるためこれが効いたのだろう。発芽のさいには無菌の種植え用の土のほうがいいという情報もあったが、この結果からは関係ないといえそうだ。

植える方向は

これは条件付きで縦のほうがいいと思った。

数字では、判断つかない。横植えのほうがサイズは大きい。後述するように高さは高ければいいというわけではないのだが、幅の面で横植えのほうが勝っている。一方、縦植えの発芽率は100%で、葉の枚数も多い。アデニウムにとって大事な茎の太さはパターン1、2だけを比較すれば互角だ。

観葉植物として大事な形という面でいうと、どちらの土の場合でも横向きのものは比較的形がよくないようだ。パターン3は寝たまま伸びていたり二葉が出るべきタイミングで一枚しか葉が出なかったりしたし、パターン1はその高さに茎の太さが伴っていないものが多い。縦植えはぷっくりとまっすぐ順調に育っている印象だ。

ただ、縦植えには根本的な問題があった。種の細いほうから根がでるためそちらを下にして植えるべきなのだが、これが見分けつかない。

実際、10個植えて4つで上下を間違えており、上向きに根が出てきたときに急いでひっくり返していた。

2択で10個中4個間違いとはほぼ見分けられていないということだ。

これを見分ける方法さえあれば、発芽率高く、葉の枚数多く形のいい縦植えのほうがいい。

 

じゃあどう育てればいいか

以上比較してみて、発芽率高く、形よく、葉の多いアデニウムを発芽させるための方法を考えた。

①種を2日以上水につける

今回1日給水させて植えたが、2日以上水につけるか濡れティッシュの上に置いておくとそのまま根が出るらしい。

根が出れば植える方向を間違えることはない。

②殻を外す

植える前に殻が外れるなら外したほうがいい。これには理由がある。

今回パターン1でヒョロヒョロのびてしまったものは、発芽後ずっと殻が芽の先からとれずにいた。傷つけそうだったのでそのままにしていたのだが、ヒョロヒョロとそのまま伸び一番背が高くなったところでようやく殻が落ち葉が出てきた。

想像だが、芽の先に光を感知する機能があり、それが覆われたままだと、まだ土の中だと判断してずっと伸びていくんじゃないかと思う。その結果高さはあるけど太くないヒョロヒョロのが生える。

だから殻は外したほうがいいんじゃないかな。

多肉植物用の土に縦方向に植える

もちろん生えてきた根のほうを下にして。

④1か月くらいは室内で、葉が出てきたら外に

この辺の正解はよくわからないけどたっぷり日に当てて適当に水あげてたら勝手に育ってた。

まとめ

発芽に挑戦していろいろ迷いながらもいい方法を見つけられた気がする。

今のところアデニウムは元気そうだが、これから涼しくなり冬を越したり、種植えトレーのままなので植え替えたり、形よくするために根や葉を剪定したりする必要があるみたい。またいろいろ試してみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【実生記録0日目】アデニウムの育て方をいろいろ試してみる

街を歩いているとカフェの前に不思議な鉢植えの植物があった。根元が丸々太り、その表面はひび割れながらつややかで、なまめかしいというか生々しいというか。

細い枝を何本も広げ、幹とは裏腹に葉は没個性的だ。

まるで小人が地中に埋まって葉でカモフラージュをしているかのよう。今にも動き出しそう。かわいい。

 

アデニウムを種から育てることに。

自分がかわいいと思った植物は調べてみるとアデニウムというらしい。

根本や茎が太る植物を塊根植物またはコーデックスと言うらしく、どうも自分が見たのは、その中でもポピュラーなアデニウムアラビクムというやつみたい。口に出して言いたい。アデニウムアラビクム。

 

欲しい。育ててみたい。でも結構いい値段するな。お、種だと安いぞ。

育てるのは難しいのか。いや調べた感じいけそうだ。

ん?冬を越すのが難しいのか。そのためには早めに発芽させて冬にはなるべく大きくしておく必要があると。

早めって?夏前?あ、今じゃん(6月上旬)。早くやらなきゃ。ぽちっ。

 

ネットが普及して久しく、それ以前の生活なんか思い出せないけれど、マニアックで小難しそうな趣味へのアクセスがぐっとしやすくなったのは間違いない。

南米だかアフリカだかの植物を見つけ、タイ人だかインド人だかが育て方をYoutubeにアップしているのを漁って見ているうちに、特殊な植物なんか育てた経験のない自分にもなんかやれそうな気がしてしまうのだ。

いやむしろ世の中みんなやっていて、自分もやらなきゃ出遅れたような気さえしてきてしまう。普段の生活でアデニウムなんて言っている人見たことないのに。みんな口に出して言おう。アデニウムアラビクム。ウィンガーディアムレビオーサ。

 

種が届いたが育て方がよく分からない。

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アデニウムの種

しわしわで細長い形をしている。こんな貧相な種からあの丸々とした植物が育つなんて信じられない!

、、いや、知ってた。いっぱい調べたもん。両端から産毛みたいのが生えた状態で収穫されて、細長い側から根、ちょっと太い側から葉が生えることも知ってる。

 

それでここからどう発芽させるかというと。。

ここからが困る。世の先生方、先輩方はいろんな方法で育てていて何が正解かわからない。種まきの前に水につけておくか否か。つけておくにしても数時間から2日まで差がある。冷蔵庫に入れておくといいという人もいる。

種まきのときの土にしても、サボテン用だったり、栄養も吸水性もない土だったり。植える方向も縦だ、横だと。種は20個もあるため、どの方法がいいのか比較することにしよう。

 

土と植え方を変えて試してみる。

事前処理

冷蔵庫に入れるといいか。これは低温処理というらしい。

人工的に冬の状態にし暖かいところに持っていくと春が来たと判断して芽が出るらしい。

へ~植物っておもしろい。でもアデニウムは原産地は○○。冷蔵庫相当の冬などあるのだろうか?必要ないかな?

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丸1日給水。1日後にはすべて沈んでいた。



 

給水させたほうが発芽率高く、早く発芽すると説明されていた。Youtubeのどこかの国の人が。

調べてみると、アデニウムに限らず乾燥した種から発芽しないのは一般的なことみたい。

それに殻には休眠物質が含まれている場合があり、水につけておくとこれが流れ出し発芽しやすくなる植物があるらしい。アデニウムがこれにあたるかはわからないけど。(知っている人からしたらすごく当たり前のこと言ってるかも。もしくは見当はずれのこと。)

とりあえず、水につけることはメリットはあってもデメリットはなさそう。一日つけることにしよう。二日待つといいって説もあったけど待ちきれなかった。

 

使う土について

土の種類がわからない。

多肉植物用のを使えばいい、○○土と○○土を混合がいい、どこどこのオリジナルだ、無菌の土などなど、いろんな土が使われているみたい。原産地の土に近ければいいのかもしれないけどそれこそどんな土かわからない。

ホームセンターに行ったら、そのまま使えそうな土が2種類売っていた。両方買って試すことにした。

・種植え用の土。無菌、無肥料。種は弱いし発芽のための栄養は種自身が持っているんだから、下手なことしちゃだめ派。

多肉植物用。肥料入り、水はけ良いけど、保水力もいい。種だからって特別扱いしない、生まれる前から大人と同じように扱う硬派。

 

植え方

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植え方2通り

植え方深さ1cmくらいのところに横向きに植えたり、横向きにしてうっすら土をかけたり、根が出るほう(細いほう)を下にして縦に頭が少し出るくらいにして植えたりいろいろあるみたい。

今回は両極端な二つの方法を試すことにした。

・横向きにして1cmくらいに植える

・縦向きで頭を少し出す

後者のほうが早く芽が出そうだが、安定して根付くか不安だ。前者のほうがしっかり根付いて生えそうな気はする。

 今回試す植え方まとめ

土の種類と植え方をそれぞれ二パターン合計4パターンに分けて、どの方法が一番発芽率がいいか、形よく育つか試す。

多肉植物用の土 横植え

多肉植物用の土 縦植え

・種植えようの土 横植え

・種植えようの土 縦植え

結果はまたいずれ。

 

明治時代の小説を参考に料理してみた

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茶碗鮨という料理。これが簡単でうまい。

明治時代に書かれた「食道楽」という小説がある。この小説が大好きで何度も読み返している。

大食いで少し間抜けな学生と才色兼備で料理上手なお嬢さんの恋路が話の筋だ。ただ特徴的なのは、登場人物がずーっとご飯の話をしていることだ。で、ずーっと何か作って食べている。

それがいちいち絶賛しているから食べたくなる。ただそんな昔の料理提供してくれるところなんてない。

じゃあ自分で作るしかない。作ってみた。

食道楽の紹介
「明治洋食ことはじめ」によると日本人が肉を食べるようになったのは、明治5年らしい。開国して外国の多様な食文化が入ってきたのもこの時代。西洋料理を食べるようになるまでの過渡期と言える時代に、村井弦斎によって書かれた食道楽は、庶民向けに西洋料理を紹介する本として絶大な人気を誇ったらしい。

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何度も読み返している。お気に入り。
大食いで劣等生の大原満が主人公だ。大原の友人中川の妹がヒロインのお登和譲。才色兼備でおしとやかで魅力的な女性なのだが、料理の話になると止まらない。兄中川とともに料理の作り方はもちろん、栄養学、食育など多岐にわたって説明しだす。そんな話をおかずにみんなモリモリ食べる。食べすぎはよくないなんてこと言いながらおかわりする。突っ込みだすときりがないが、そんな知識も庶民に向けて平易に解説していたところもこの小説が人気だった理由かもしれない。

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大原満(左)とお登和譲(右)
 
飯食ってる場合か
ちょっとネタバレしてしまうが、物語も後半、大原がお登和譲とは別の女性と縁談を組んでしまう。周りの人たちは慌てて、なんとか大原とお登和譲をくっつけれないかと相談する。お登和譲も相当悲しんでしまうし、なんとかしなければならない状況。
で、みんなどうするか。なんと、お弁当の献立を相談し、世の食育を憂い、カステラ焼いてコーヒー飲んでいっぷくするのである。おいおい。
読者置いてきぼりで理解を超えた行動をする。さらにさんざんお菓子を食べた後にみんなで夕ご飯にしようと中川氏が客人にふるまったのが今回再現する「茶碗鮨」だ。
読んでるほうとしては大原とお登和譲の関係が気になるが、中川氏は得意げにレシピを披露する。以下中川氏のお言葉を引用。
 
"これには鮪の身の極く上等でないといかん。羊羹のような上肉ばかりに限るのだ。その鮪を買って来て小さく四角に即ちサイの目に切っておく。別に醤油一杯と味醂一杯と酢一杯とを三等分にしてよく煮詰めて火から卸した時鮪の身を入れると鮪の端が少し白くなる。それへ山葵をなるたけ沢山入れて掻き廻すのだ。よくこの料理を泣く御飯といって山葵の辛いので泣きながら食べるといった位なものだ。別に葱の細かく刻んだのや茗荷だの浅草海苔を炙いて揉んだのと紅生姜の細かいのだの紫蘇だのを薬味にして、炊きたての熱い飯へ残らず打ちかけたのだ。"
 
要は甘じょっぱいたれで鮪の表面だけ火を通し、たっぷりの山葵とともにどんぶりにする。簡単そうだしおいしそう。もう縁談なんてどうでもいい。本を置いて材料を買いに行こう。 

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牛肉の部位を語って楽しそうなお登和譲
材料
中川氏の言葉を参考に用意した材料が以下だ。小説の中で説明されていないので分量は適当。
 
(二人分)
・まぐろ 柵で200gくらい(羊羹のような上肉じゃなくて安いメバチマグロ
・アボカド 1個(中川氏はアボカドなんて言ってないけどさ。ほらおいしそうじゃん)
・醤油 大さじ1
・みりん 大さじ1
・酢 大さじ1
・わさび チューブで10cmくらいたっぷり
・(お好みで)大葉 数枚
・(お好みで)みょうが 1個
どれも簡単に手に入る。どうだ現代すごいだろ。中川よ、アボカドなんて食べたことないだろ。
 
 
さっそく作っていこう
さっそく作っていこう。と言っても作ってみると非常に簡単だ。
1.まぐろを1.5cm角に切る。アボカドを適当にスライス。大葉、みょうがは千切りにしておく。

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まぐろは柵のままがいい。安物でいい。
 
2.醤油、みりん、酢を鍋に入れ火にかける。沸いて数秒みりんのアルコールがとんだころで火を止める。

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これくらいで火を止める。
3.急いで鮪を鍋に入れ実の表面が全体に白くなるように身を転がす。
4.チューブわさびを握りしめこれでもかと入れる。よくたれにわさびを溶かす。

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わさびのチューブを握りしめる!
5.茶碗にご飯を盛って、アボカドを載せる。鮪の身をたれとともにかける。
6.大葉、みょうがを載せる。
完成。材料を切ってしまえばものの数分で出来上がってしまった。
(完成の写真:ものの数分で出来上がり)
 

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材料切る時間合わせても10分程度で完成。
食べてみる。
早速食べてみた。醤油、みりん、酢、つまりは三杯酢という定番のさっぱりあじつけにわさびがよく合う。鮪の身のねっとりした食感は残しながら、表面だけ火を通したことで食べ応えができて新しい。これはおいしいぞ。
たれをたっぷりかけて、薬味も一緒にもしゃもしゃかきこむ。
目の前の問題そっちのけで自慢げに客人にふるまう中川氏の気持ちもわかる。大原よ、好き勝手にしたまえとそんな気持ちになる。
 
最後に
おいしかった。手軽に作れるし、おすすめ。たぶんこれから定番料理になりそうだ。
今回は手軽にできそうな茶碗鮨を選んだが、ほかにも気になるメニューはたくさんあるからまた再現して紹介したい。この小説を通して紹介されているメニューは600以上だとか。牛の顔の皮のシチューとか、牛の脳みそのコロッケとか(いやマジか中川)。
ところで中川氏、この茶碗鮨のことをこうも言っている。
"この料理はこのまま西洋皿へ盛って西洋料理の中へ出せるよ。先ず鮪のライスカレーさね。"
いや、それはさすがに違うよ中川。